2012年01月12日

永遠の0



著者:百田 尚樹

成績優秀で合格間違い無しといわれていたにもかかわらず、3 回連続司法試験に落ちた主人公。やる気を無くしてブラブラしていた彼は、司法試験を目指すきっかけとなった尊敬する祖父が、祖母の再婚相手で実は血がつながっていなかったことを知る。実の祖父が零戦乗りで、終戦前に特攻で亡くなったことを知っても特に感じるところはなかった主人公が、ライターの姉の願いを聞き入れて実の祖父の足跡をたどった先には、戦争という大義と権力者に翻弄された市井の人々の現実と、家族の秘密があった。話の流れに乗りやすく、ぐいぐい引き込まれた。
戦争小説はあまり読んでいなかったし、戦史の裏側もあまり興味がなかったけれど、なんというか、戦前も今も、権力者のやることは同じなのかとまずそこにがっかりし、また安堵した。戦後の日本は大きく変わったというけれど、戦前のすべてが素晴らしかったわけではなかったという点で。後ろ向きな安堵感だし、素晴らしくないのは権力者だけかもしれないけれど。

この生き様が描かれた実の祖父、宮部久蔵という人に、著者はリアルなモデルを用意していないそうだ。実在の人物がモデルであってほしかったと、個人的に思う。この本の執筆後、著者はたくさんの元零戦乗りにあったのだそうだが、彼らは「こういう人はいた。」「彼のモデルは自分の知っているxxではないか」と話していたという。なのに、著者は「モデルはいない」と、その話を後日談としてテレビで話していた。先に聞いてモデルがいればもしかしたら、宮部という人に感じた違和感もなかったのじゃないか?
読み終わった後、解説を読んでいる時に、この違和感の理由に気が付いた。
幾人か登場する実在の零戦乗りのくだりと、さらには名前だけ登場するこれまた実在の零戦乗りのくだりが、結局宮部久蔵が想像の産物であることをにおわせる。におわせるのに真実味もないわけじゃないからもどかしく、違和感を感じるのだ。日本の小説は、こういうフィクションとノンフィクションの狭間みたいな小説に出会う確率がすごく高い。だから苦手なのだ。

この物語の世界にどっぷりつかりこみ、感動して涙もこぼれたけれど。
人に「おもしろいよ」と薦められる小説だけど。
結果として読後感が今一つよくないのが残念でならない。
posted by Nigi at 09:24| 福岡 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 書誌 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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